『プルースト現象』とは、特定の香りを嗅ぐことでその匂いにまつわる記憶を思い出す現象のことです。
実態がないものなのに映像としての記憶を呼び起こせるなんて、すごい力ですよね。
プルースト現象と呼ばれる理由
この現象は、フランスの有名な文豪『マルセル・プルースト』の代表作である、『失われた時を求めて』の主人公が、焼き菓子に浸した紅茶の芳香をきっかけに、幼少時代の忘れていた思い出を瞬時に取り戻すという描写があることからつけられました。
『プルースト現象』と呼ばれているこの記憶の回復について、そのメカニズムはいまだ解明されていませんが、高齢者のの認知症予防や対策に利用できるのではないかと、様々な取り組みが行われています。
嗅覚は、鼻から直接電気信号として大脳辺縁系に作用するわけですから、理屈や仕組み云々はともかくとして、脳髄反射的に本能で思い出を回復させているのかもしれません。
実際に、認知症の高齢者の方に若いころの趣味である書道の墨汁の臭いを嗅がせたら、当時の友人の名前や家族のことを思い出したという話もあるそうです。
管理人に『プルースト現象』が起こった話
管理人にも、実は『プルースト現象』を体験したことがあります。
娘が保育園の年少のころ、花輪をつくりたいと言うので一緒にレンゲ畑に足を踏み入れました。
足を踏み入れるまで、私にはレンゲ畑が嫌いだという思いは全くありませんでしたが、その花の芳香をかいだ瞬間、小学生のころの苦い思い出と痛みが鮮烈に思い出されたのです。
実は私、小学生のころ、レンゲ畑の中でハチに刺された経験がありました。
もちろん、レンゲ畑に入るまですっかり忘れていて、そこが怖い場所なんて思いもしません。
でも、レンゲ畑にうずくまって大泣きした記憶がレンゲの花の香りと共によみがえってしまったのでしょう。
娘を怖がらせたくなかったので騒がず黙っていましたが、幼少期の記憶とはいえ、レンゲ畑から出るまで怖かったです。
やっぱり嗅覚には、感情に訴える強い力があると実感させられる出来事でした。
私だけでなく、おおかれ少なかれ、だれにでも『プルースト現象』は起こり得ると思います。
今回の管理人の話は、怖い話でしたが、きっと良い記憶を思い出すこともあるでしょう。
また、仕事や試験勉強など実用的なものに応用できたら、香りの可能性がもっと広がりそうですね。