日本でも、少しずつ馴染みのあるスパイスが増えてきましたが、まだまだ海外の使用量に比べたら、全く使ってもいないに等しいレベルかと思います。
スパイスは、料理の幅を広げ、健康や美容にも大きな効果を発揮する優れた存在です。
しかし、馴染みの薄い日本では、一部のスパイスしか店頭で購入できません。
日本でも、どんどんみんなでスパイスを使い、もっと買いやすい市場になっていけばと良いなと思います。
今回は、スパイスの簡単な歴史とスパイスが世界に与えた影響についてお話したいと思います。
古代から使われていたスパイスたち
紀元前6000年ほど前のインドではすでに、ペッパー類やクローブなどのスパイスが使われており、古代エジプトでも、スパイスやハーブの防腐・殺菌効果に注目し、ミイラの防腐剤として利用されていました。
また、エジプトの王の墓であるピラミッドに建設の際に、滋養強壮効果のあるオニオンやガーリックが活躍したほか、紀元前2500年前の中国では、神にささげる供物用の飯をスパイスで炊き上げたとされており、古代からスパイスは、人類の生活に密接な関係があったと考えられます。
香料の道の誕生と東西交流の開始
シナモンやカルダモン、ジンジャー、ターメリック、などのスパイスは、東洋の国々では古い時代から活発な貿易活動が行われていました。
紀元前2~3世紀ごろになると、イスラエル南部の砂漠にある都市群を通って、乳香や没薬(どちらもアラビア半島原産の樹脂)や宝石、東アジアのスパイスが、キャラバン(ラクダに乗った商隊)たちにより、西方へと運ばれるようになり、その交易路は、当時『香料の道』と呼ばれていました。
また、海路では、インドから紅海を経由してローマに運ばれる道がありましたが、7世紀中ごろに、アラブ諸国によって紅海と地中海を結ぶ航路が遮断されたため、北アフリカとインドは、ヨーロッパの貿易圏から離脱することになりました。
スパイスの独占とスパイスの価値の上昇
まだ、ヨーロッパに食材を保存する技術がなかったため、高い防腐・殺菌効果を持つスパイスは、金銀財宝に劣らぬ高級品として取引されており、貿易商たちはこぞってその権利を独占しようとしました。
中世には、アラブ商人がインド洋の航路を支配しはじめると共に、インドネシアのモルッカ諸島から極東の資源地の開発を開始し、スパイスの産地を隠すために、怖いうわさや嘘の情報を流布するなどの対策をしたことで、スパイスの価値はどんどん跳ね上がっていきました。
しかし、オスマン帝国が東ローマ帝国を滅ぼし、地中海の支配権を得たことで流れが変わり、アラブ商人主体のスパイス貿易は衰退をはじめ、14世紀ごろになると、イタリアの海洋都市国家ベネツィア共和国がヨーロッパと東洋の取引を独占し、その後、100年間にわたって驚異的な発展をとげることとなりました。
大航海時代の幕開け
スパイス貿易により膨大な力を得たベネツィア共和国とオスマン帝国の支配から逃れるため、ヨーロッパ各地の国々は、直接インドへと渡る航路の開拓をはじめました。
15世紀になると、ポルトガルがアフリカ周航へと踏み出すと、探検家のバスコ・ダ・ガマがアフリカ最南端の喜望峰を経由し、インド南部のカリカットに到達、スパイスや宝石などの商品を本国に持ち帰ることに成功しました。
さらに、その数年後には、探検家のペドロ・アルヴァレス・カブラルがブラジルを発見し、スパイスを大量に持ち帰ったことにより、ポルトガルはベネツィアの独占貿易を崩すことに成功したのです。
スパイス争奪戦とその末路
ポルトガルは、新しい海路の発見後、その航路を独占したため、ヨーロッパ諸国は、次々に別の道を見つけようと探検家を海に送り出しました。
そして、スペインが送り出した探検家クリストファー・コロンブスによって、西周りの航路からアメリカ大陸が発見されたことで、インドには到達できませんでしたが、新大陸から、新種の植物やスパイスを持ち帰り、多大な恩恵を受けることができました。
また、オランダもスンダ海峡と喜望峰を結ぶ別航路を開拓し、東インド会社を設立、ポルトガルの支配下におかれた生産地を次々に手に入れ、ポルトガルの優勢を崩すことに成功しました。
その後、イギリスが地上貿易にてモルッカ諸島からナツメグとクローブを密輸し、自国での栽培に成功したことで、スパイスの生産地が拡大し、19世紀には、スパイスを独占する国はなくなり、やっと適正価格での取引きが行われるようになりました。
現代のスパイス
現在、スパイス生産地の代表はインドであり、そのシェアは世界の8割以上となっています。
アメリカを筆頭に、ドイツ、フランス、そして日本にも大量に輸入されているスパイスたちは、現代でも生活に欠かせない大事なパートナーです。
せっかく、長い政治的支配からスパイスたちが解放され、一般世帯にも普及をはじめたのですから、もっともっと積極的に利用していきたいですね。