精油を植物から抽出する方法は、主に5種類に大別できます。
ここでは、それぞれの抽出方法について、簡単に解説していきましょう。
水蒸気蒸留法
原料植物(ハーブ)を蒸留窯で蒸し、精油成分を蒸発させる方法です。
蒸留窯から出る水蒸気を冷却することで、芳香蒸留水と精油(分離した上澄み部分)にわけることができます。
精油を取り除いた後に残る芳香蒸留水には、水溶性の香り成分が含まれており、フロアフレグランスなどのフローラルウォーターとして利用可能です。
ただし、蒸気蒸留法は高熱による抽出方法であるため、熱に弱い香りや成分が壊れてしまう場合があります。
熱に弱いハーブ(柑橘類など)は、水蒸気蒸留法以外の抽出方法を利用しましょう。
圧搾法
オレンジやレモンなどの柑橘類から、精油をとる際に使われる方法です。
昔は、手作業で果皮を圧搾し、スポンジに吸収させて精油をとっていましたが、現在は、専用の機械などで圧搾した後、遠心分離機にかけて精油を取り出しています。
この方法は熱を加えないため、精油の香りや成分をほとんど損なわずにすみますが、不純物が混入しやすく、他の抽出方法に比べ、精油の劣化が早いという欠点があります。
油脂吸着法(アンフルラージュ)
牛脂(ヘット)や豚脂(ラード)などの油脂に原料植物を入れて、芳香成分を溶かしだす方法です。
花びらに芳香成分を持つハーブから、精油を抽出する際に用いられます。
非常に時間と手間がかかる方法であるため、最近はほとんど利用されていません。
主な吸着方法は、常温で花びらを固形油脂の上に並べて作る冷浸法(アンフラージュ)と、花びらを60~70℃に熱した油脂に浸して吸着する温浸法(マセレーション)の2種類です。
また、油脂吸着法で芳香成分を吸着し、飽和状態になったものを『ポマード』、エチルアルコールによって芳香成分を溶かしだし、精油だけを取り出したものを『アブソリュート』と呼びます。
揮発性有機溶剤抽出法
揮発性有機溶剤(石油エーテル、ベンゼン、ヘキサン)を用いて、精油を抽出する方法です。
原料植物と有機溶剤を溶剤窯に入れておき、常温で芳香成分を溶かしだします。
その後、原料植物と有機溶剤を取り除くと、コンクリートと呼ばれる半固形成分だけが残るので、それをエチルアルコールによって、ワックス成分と芳香成分に分けます。
そして、精油成分だけを残したものを『アブソリュート』と呼び、油脂吸着法で得られるものとほぼ同じものとなります。
現在、アブソリュートと言われる精油は、ほぼこちらの揮発性有機溶剤抽出法で作られたものです。
また、この方法を使い樹脂から芳香成分を抽出したものは『レジノイド』と呼ばれ、精油などの芳香成分を持続させる保留剤として利用されています。
超臨界流体抽出法
近年開発された液化ガスを使って芳香成分を溶かしだす抽出方法です。
高い圧力を加えた二酸化炭素には、超臨界状態(気体と液体の中間)になる性質があり、この超臨界状態の流体は、気体と液体、双方の性質をもっています。
この超臨界状態の流体は、ハーブによく浸透(拡散)するため、効率よく芳香成分を取り込むことが可能です。
圧力を戻すことで、超臨界状態の流体は気体となって気化し、芳香成分だけが残り、それを『エキストラクト』と呼びます。
超臨界流体抽出法は、極めて安全性が高く、芳香成分を損なわないメリットがありますが、非常に高価な装置を必要とするため、商業性が高く、一般的な抽出方法ではありません。